コレクトウェル装着で保持がたやすくなる嚥下姿勢の数々

コレクトウェルの使い方

さまざまな原因で嚥下障害が起きた場合、呑み込みがしにくくなったり、食道に食物が流れにくくなったりして、誤嚥しやすくなります。そのときに姿勢を調整することで症状が改善することがあります。これを姿勢調整法といいます。調整姿勢には、顎引き嚥下姿勢・頸部回旋・健側傾斜姿勢・一側嚥下などがあります。いずれもコレクトウェル装着で保持がたやすくなる嚥下姿勢です。
顎引き嚥下姿勢については、これまでの記事で詳しく紹介しました。本稿では、他の3つの姿勢について、日本摂食嚥下リハビリテーション学会による「訓練法のまとめ(2014 版)」から、抜粋してご紹介します。

①頸部回旋(neck rotation, head rotation)(別名;横向き嚥下)
頸部を回旋することで、回旋側の梨状窩が狭くなり、非回旋側の梨状窩が広くなります。同時に、非回旋側の食道入口部静止圧が低下します。回旋によって生じる咽頭内の変化を利用して、食塊を咽頭の非回旋側へと誘導し、誤嚥の防止や咽頭残留軽減を達成します。
対象者:頭頚部腫瘍術後で片側の咽頭・喉頭や声帯が麻痺した患者様、同様の部位の神経麻痺による嚥下障害患者様、咽頭機能に左右差があって梨状窩に食塊が残留する患者様、食道入口部の開大不全がみられる患者様など

②健側傾斜姿勢(健側を下にした側屈位または傾斜姿勢)
健側は、患側と比べ運動機能も感覚機能も優れています。健側を下にした側屈位または傾斜姿勢を取ることで、重力を利用して健側に食塊を流入させ、同時に食塊の流れを遅くして送り込みを容易にすることができます。本法は、器質性(静的)嚥下障害と運動障害性(機能性、動的)嚥下障害の両方に適用することができます。
対象者:口腔・咽頭の感覚機能や運動機能に左右差(健側と患側)のある嚥下障害患者様など

③一側嚥下(健側を下にした傾斜姿勢と頸部回旋姿勢のコンビネーション)
本法は、①の頸部回旋姿勢と②の健側傾斜姿勢とを併用することによって食道入口部の通過障害を改善させる方法です。本法は、器質性(静的)嚥下障害と運動障害性(機能性、動的)嚥下障害の両方に適用することができます。頸部回旋姿勢と傾斜姿勢のメリットを共に享受することができる姿勢です。
対象者:食道入口部の通過障害を呈する患者様、頸部回旋では食塊が患側に送り込まれてしまう患者様など

これまでに説明した姿勢は、訓練中や食事中に安定して保持されることが望ましい姿勢です。嚥下障害や誤嚥不安は、特に高齢者で多発する問題です。高齢者にありがちな摂食中の疲労は、姿勢崩れの原因となります。人間には固有感覚がありますから、自分で正しいと思う姿勢と医療者から指示された姿勢が異なることもあります。

誤嚥を解消するための姿勢調整法。頭部回旋、横向き嚥下の例

姿勢調整法の例です。咽頭残留を減らすために、頭部を回旋して食物を横向きで飲み込んでいます。

訓練中や食事中にコレクトウェルを使う事によって、姿勢の崩れを解消することができます。

コレクトウェル装着で、むずかしい姿勢調整が、再現性よく、たやすくできるようになるのです。

頚椎の右側湾曲解消のため、装具の左右の高さを調整 

コレクトウェルは、後遺症の嚥下への影響を、左右の高さを調整することで解消しました。

今回は具体例をご紹介できませんでした。次回は、開発者が経験した具体例について詳しくご紹介いたします。

コメント